駅徒歩○分はどう決まる?実際の時間との違いを解説
賃貸物件を探していると、「駅徒歩5分」「駅徒歩10分」といった表示をよく見かけます。
でも、この「徒歩5分」は、
「実際に誰かが歩いて測った時間?」
「駅と物件の直線距離?」
「道路距離なら、どの道を通るの?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
結論からいうと、不動産広告の「駅徒歩○分」は、実際に歩いてかかった時間をそのまま表示しているものではありません。
マンションやアパートの場合は、建物の出入口から駅の出入口までの「道路距離」をもとに、80mにつき徒歩1分として算出します。1分未満の端数は1分に切り上げます。
例えば道路距離が500mなら、
500m ÷ 80m = 6.25分
となるため、広告上は「徒歩7分」です。
ただし、駅徒歩○分を正しく理解するには「80m=1分」だけでは十分ではありません。
その道路距離をどこからどこまで、どのように測るのかまで知っておくことが大切です。
この記事では、不動産広告の表示ルールをもとに、駅徒歩○分がどのように決まるのかを順番に解説します。
- 駅徒歩○分は「道路距離」をもとに計算する
- 道路距離はどこからどこまで測る?
- 道路距離とは?直線距離との違い
- 「道路距離」は公道だけとは限らない
- 「最短距離を使う」と決まっている?
- 信号待ちや踏切待ちは徒歩時間に入る?
- 坂道や階段はどう計算する?
- 大規模マンションは住戸の玄関から測らない
- 複数棟の物件では「徒歩○分~○分」となることがある
- 駅徒歩の表示ルールは2022年に一部変更された
- 広告より実際の駅までの時間が長くなることがある理由
- 同じ「駅徒歩10分」でも歩きやすさは違う
- 内見時は実際に駅まで歩いて確認しよう
- 駅徒歩○分についてよくある質問
- まとめ|駅徒歩○分は「道路距離」を理解すると分かりやすい
駅徒歩○分は「道路距離」をもとに計算する
不動産広告の徒歩所要時間は、物件と駅を一直線に結んだ「直線距離」で計算するわけではありません。
使用するのは道路距離です。
その道路距離を、
80m=徒歩1分
として徒歩所要時間に換算します。
1分未満の端数は1分として算出するため、例えば次のようになります。
| 道路距離 | 徒歩表示 |
|---|---|
| 80m | 徒歩1分 |
| 400m | 徒歩5分 |
| 500m | 徒歩7分 |
| 800m | 徒歩10分 |
| 810m | 徒歩11分 |
| 1,200m | 徒歩15分 |
ここで重要なのは、
「80m=1分」は時間を計算するルール
だということです。
その前に、
「何mの道路距離なのか」
を決める必要があります。

道路距離はどこからどこまで測る?
道路距離や徒歩所要時間を算出するときは、物件側の起点と、駅など施設側の着点についてもルールがあります。
マンション・アパートの場合、物件側は建物の出入口を起点とします。
駅側は、その施設の利用時間内に常時利用できる駅の出入口が着点です。
イメージすると、
住戸玄関
↓
共用廊下・エレベーター
↓
【建物の出入口】
↓
道路
↓
【駅の出入口】
↓
改札
↓
ホーム
となります。
つまり、駅徒歩○分を算出するときに基準となるのは、
建物の出入口 → 道路 → 駅の出入口
の道路距離です。
住戸の玄関から建物出入口までや、駅出入口から改札・ホームまでを含めて「駅徒歩○分」を計算するわけではありません。
そのため、
「駅徒歩5分=自宅の玄関を出て5分後にホームへ到着できる」
という意味ではありません。
道路距離とは?直線距離との違い
「道路距離」と聞くと、
「結局、どの道路を測るの?」
と思う方もいるでしょう。
首都圏不動産公正取引協議会の消費者向け解説では、徒歩所要時間について、地図上で道路距離を計測すると説明されています。
物件と駅を地図上で一直線に結んだ直線距離ではありません。
例えば、物件と駅の間に大きな道路があり、その場所を歩行者が直接横断できないとします。
駅が目の前に見えていたとしても、離れた横断歩道や歩道橋を利用しなければ渡れないのであれば、実際に通行できない場所を横切った短い距離を基準にすることはできません。
通行する必要がある横断歩道や歩道橋などを経由した道路距離で考える必要があります。
物件と駅の間に川や線路などがある場合も、地図上の直線距離だけでは駅までの近さを判断できないことがあります。

「道路距離」は公道だけとは限らない
「道路距離」という名前から、公道だけを通った距離だと思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
首都圏不動産公正取引協議会は、物件から周辺施設までの道路距離について、誰でも特段の制限なく常時通行できるのであれば、公道以外を経路として使用しても問題ないとの見解を示しています。
例えば、
・川沿いの通路
・商業施設内の通路
などが該当する可能性があります。
公園内を経由するルートについても、徒歩所要時間の算出に利用することができます。
ただし、公園などに通行可能な時間の制限がある場合は、その時間を明示する必要があります。
また、24時間通行できる場合でも、夜間の安全面などを考慮し、通常の道路を経由した時間も併せて表示するよう首都圏不動産公正取引協議会は案内しています。
川沿いの通路や商業施設内などについても、防犯面や将来その経路を利用できなくなる可能性などを考慮し、公道を経由した道路距離または徒歩所要時間を併記することが推奨されています。
つまり、
「道路距離=公道だけを通る距離」ではありません。
物件情報を見る側としては、駅徒歩○分だけでなく、地図で「どのルートを通るのか」まで確認しておくと安心です。
「最短距離を使う」と決まっている?
駅徒歩について、「駅までの最短ルートを使って計算する」と説明されることがあります。
ただし、ここは少し慎重に考える必要があります。
現行の「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」では、
・道路距離を使用すること
・道路距離や所要時間の起点・着点
・徒歩は80m=1分で算出すること
・実際より短いと誤認されるおそれのある距離表示をしてはならないこと
などが定められています。
一方、規約・施行規則本文には、「必ず最短の歩行経路を選ぶ」とする具体的な経路選択方法までは明記されていません。
そのため、本記事では、
「駅徒歩○分は必ず最短道路距離で計算することが規約で決められている」
とは断定しません。
重要なのは、実際には通行できない場所を通ったことにして、駅までの距離を実際より短く見せることはできないという点です。
信号待ちや踏切待ちは徒歩時間に入る?
ここも誤解されやすいポイントです。
徒歩所要時間は道路距離を80m=1分として算出するため、信号や踏切で実際に待った時間を、そのまま徒歩所要時間に加算する仕組みではありません。
例えば、
物件
↓
横断歩道まで100m歩く
↓
信号を待つ
↓
横断する
↓
駅へ向かう
というルートの場合、
横断歩道まで移動する道路距離
は計算に関係します。
一方、
赤信号で実際に何秒待ったのか
を計測して、徒歩時間に追加するわけではありません。
踏切についても同様に、踏切待ちの時間そのものを徒歩所要時間に加える計算ではありません。
そのため、広告では「駅徒歩10分」でも、朝の通勤時間帯に大きな交差点や踏切で待つことが多ければ、実際には10分以上かかることがあります。
坂道や階段はどう計算する?
坂道や階段についても、実際に歩いた時間を測定して徒歩所要時間を決めるわけではありません。
首都圏不動産公正取引協議会は、坂道や階段について、傾斜に沿った距離ではなく、真上から見て平坦とみなした距離で計測すると説明しています。
そのため、同じ道路距離800mでも、
・ほぼ平坦な道
・長い上り坂がある道
・階段が多い道
では、実際の歩きやすさや所要時間が違うことがあります。
駅徒歩○分は、坂道のきつさまで表している数字ではありません。
大規模マンションは住戸の玄関から測らない
大きなマンションでは、
「エントランスに近い部屋と遠い部屋で駅までの時間が違うのでは?」
と思う方もいるでしょう。
実際の移動時間には差が出る可能性があります。
しかし、マンションやアパートでは、道路距離・所要時間を算出するときの物件側の起点は建物の出入口です。
各住戸の玄関を起点に、
「この部屋は徒歩5分」
「奥の部屋だから徒歩7分」
と算出する仕組みではありません。
実際の生活では、
住戸玄関
↓
共用廊下
↓
エレベーター
↓
建物出入口
という移動があります。
特にタワーマンションや大規模マンションでは、エレベーター待ちなども含め、住戸玄関から建物を出るまでに時間がかかることがあります。
駅への近さを重視するなら、広告上の徒歩分数だけでなく、住戸玄関から建物出入口までの移動時間も確認するとよいでしょう。
複数棟の物件では「徒歩○分~○分」となることがある
1棟の大規模マンションと、複数棟などからなる一団の物件は分けて考える必要があります。
現行の表示規則では、「団地(一団の宅地又は建物)」と駅などの施設との道路距離・所要時間を表示する場合、取引対象のうち、
施設から最も近い区画・建物の出入口
から算出した数値だけでなく、
施設から最も遠い区画・建物の出入口
から算出した数値も表示することとされています。
例えば複数棟からなる物件で、
A棟:駅徒歩5分
B棟:駅徒歩6分
C棟:駅徒歩8分
となる場合、取引対象となる物件全体について、
「○○駅まで徒歩5分~8分」
といった表示になることがあります。
これは、
「大きなマンションだから部屋ごとに徒歩時間が違う」
という話とは別です。
1棟の建物内で住戸の位置が違うことと、複数の建物などからなる物件について近い側と遠い側を表示するルールは区別して理解しましょう。

駅徒歩の表示ルールは2022年に一部変更された
現在の駅徒歩表示には、2022年9月1日に施行された表示規約・同施行規則の改正も関係しています。
主な変更点の一つが、マンション・アパートについて、道路距離や所要時間を算出する際に**「建物の出入口」を物件側の起点とすることが明文化されたこと**です。
また、複数の取引対象がある一定の物件については、施設に最も近い側だけでなく、最も遠い側から算出した所要時間等も表示するルールになりました。
さらに交通の利便性については、「最寄駅等から物件」ではなく、「物件から最寄駅等まで」の徒歩所要時間を表示するよう規定が変更されています。
ただし、部屋探しをする方がこの「方向」を細かく意識する必要はあまりありません。
重要なのは、現在の広告がどのような基準で作られているのかを理解しておくことです。
広告より実際の駅までの時間が長くなることがある理由
ここまでの内容を整理すると、駅徒歩○分と実際の移動時間に差が出る理由が分かります。
広告上の駅徒歩○分は、
建物出入口 → 駅出入口
の道路距離を80m=1分として換算したものです。
一方、実際の生活では、
住戸玄関
→ 共用廊下・エレベーター
→ 建物出入口
→ 道路
→ 駅出入口
→ 改札
→ ホーム
まで移動します。
さらに、
・信号待ち
・踏切待ち
・坂道
・階段
・歩く速度
・エレベーター待ち
などによっても実際の所要時間は変わります。
特に大きなマンションや大規模駅では、広告上の徒歩分数と「自宅玄関から電車に乗るまで」の時間に差が出やすいため注意しましょう。
同じ「駅徒歩10分」でも歩きやすさは違う
同じ駅徒歩10分の物件でも、実際の生活環境は同じではありません。
例えば、
物件A
・平坦な道
・信号が少ない
・広い歩道がある
物件B
・坂道がある
・大きな交差点がある
・踏切を通る
という違いがあれば、実際の歩きやすさや所要時間は変わります。
さらに、
・夜道の明るさ
・人通り
・交通量
・歩道の有無
・雨の日の歩きやすさ
・スーパーやコンビニの位置
なども毎日の生活では重要です。
駅徒歩○分は物件を比較するための便利な指標ですが、駅までの利便性や住みやすさのすべてを表す数字ではありません。
内見時は実際に駅まで歩いて確認しよう
駅への近さを重視するなら、気になる物件は実際のルートを確認することをおすすめします。
確認したいのは、
・どの道路を通るのか
・横断歩道や歩道橋への迂回があるか
・信号や踏切は多くないか
・坂道や階段はないか
・歩道はあるか
・夜道は明るいか
・広告の駅出入口と普段利用する出入口が同じか
・駅出入口から改札・ホームまでどのくらいかかるか
・住戸玄関から建物出入口までどのくらいかかるか
などです。
通勤・通学で毎日利用するなら、可能であれば自分の歩く速度で、
住戸玄関 → 建物出入口 → 駅出入口 → 普段利用する改札
まで歩いてみると、入居後のミスマッチを減らせます。
これから本格的に部屋探しを始める方は、駅徒歩だけでなく、家賃・間取り・入居時期などの条件も整理しておきましょう。賃貸の物件探しを始める時期については「賃貸の物件探しはいつから?」で詳しく解説しています。
駅徒歩○分についてよくある質問
駅徒歩10分なら800mですか?
道路距離800mであれば徒歩10分ですが、「徒歩10分=必ず800m」という意味ではありません。
1分未満の端数は1分として算出するため、800m未満でも徒歩10分となる場合があります。
駅徒歩は直線距離ですか?
直線距離ではありません。
不動産広告の徒歩所要時間は「道路距離」をもとに算出します。
道路距離は公道だけですか?
必ずしも公道だけではありません。
誰でも特段の制限なく常時通行できる経路であれば、川沿いの通路や商業施設内など、公道以外を経路として利用できる場合があります。
ただし、公道を利用した道路距離や徒歩所要時間の併記が推奨される場合があります。
駅徒歩は必ず最短ルートで計算しますか?
現行の表示規約・施行規則では「道路距離」を用いることなどは定められていますが、「必ず最短の歩行経路を使用する」という詳細な経路選択方法までは本文に明記されていません。
そのため、本記事では「必ず最短ルート」とは断定していません。
信号待ちの時間は徒歩時間に入りますか?
信号や踏切の待ち時間を実際に計測して、徒歩所要時間に加える仕組みではありません。
ただし、横断できない場所があり、横断歩道や歩道橋まで迂回する必要がある場合は、その経路の道路距離で考える必要があります。
マンションは住戸の玄関から測りますか?
いいえ。
マンション・アパートでは、道路距離・所要時間を算出する際の物件側の起点は「建物の出入口」です。
駅は改札まで測りますか?
駅側の着点は改札ではなく、利用時間内に常時利用できる駅の出入口です。
大きな駅では、駅出入口から改札やホームまでさらに時間がかかることがあります。
Googleマップの徒歩時間と違っていてもおかしくない?
不動産広告では、道路距離を80m=1分として徒歩所要時間を算出する基準があります。
地図サービスとは算出方法が同じとは限らないため、表示される徒歩時間が一致しないことがあります。
まとめ|駅徒歩○分は「道路距離」を理解すると分かりやすい
不動産広告の「駅徒歩○分」は、実際に歩いてかかった時間や直線距離をそのまま表示しているものではありません。
マンションやアパートでは、基本的に、
建物の出入口
↓
道路
↓
駅の出入口
という道路距離をもとに、80m=徒歩1分として所要時間を算出します。
1分未満の端数は1分に切り上げます。
また、道路距離は公道だけとは限らず、一定の条件を満たせば公園、川沿い、商業施設内などの通路を経由する場合もあります。
一方、信号・踏切の待ち時間、坂道のきつさ、住戸玄関から建物出入口までの移動、駅出入口から改札・ホームまでの移動などは、広告の徒歩分数だけでは分かりません。
そのため物件探しでは、
「駅徒歩○分」で候補を比較する
→ 地図で実際のルートを確認する
→ 気になる物件は実際に歩いて確認する
という順番で判断するのがおすすめです。
駅徒歩○分は便利な目安ですが、数字だけでは分からない部分まで確認することで、入居後の「思ったより駅まで遠かった」というミスマッチを減らせます。
【参考・出典】
本記事は、2026年9月2日時点で確認できる以下の公正競争規約・公式資料等をもとに作成しています。
・不動産公正取引協議会連合会
「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」
・不動産公正取引協議会連合会
「表示規約・同施行規則 主な改正点(2022年9月1日施行)」
・公益社団法人 首都圏不動産公正取引協議会
「徒歩所要時間について(消費者からの相談事例)」
・公益社団法人 首都圏不動産公正取引協議会
「物件の内容・取引条件等に係る表示基準」
・公益社団法人 首都圏不動産公正取引協議会
「公取協通信 第357号(2025年4月号)」
※不動産広告の表示ルール等は変更される可能性があります。実際の広告表示にあたっては、最新の公正競争規約・施行規則等をご確認ください。
