洪水ハザードマップとは?見方・浸水深・法律との関係を解説
物件を探しているときに洪水ハザードマップを確認すると、
「物件の場所に色が付いているけど大丈夫?」
「この色は何m浸水するという意味?」
「ハザードマップは法律に基づいているの?」
「水防法に基づかないハザードマップもあるの?」
など、分かりにくいことがあります。
洪水ハザードマップは、河川が氾濫した場合に想定される浸水区域や浸水深、避難場所などを確認するための重要な資料です。
ただし、「ハザードマップ」という名称の地図が、すべて水防法に基づいて作成されているとは限りません。
また、ハザードマップに色が付いているからといって、その場所に住めないという意味でもありません。
この記事では、洪水ハザードマップの見方から法律との関係、不動産契約での重要事項説明、物件探しで確認したいポイントまで解説します。
- 洪水ハザードマップとは?
- 洪水ハザードマップは法律に基づいて作られている?
- 水防法に基づかないハザードマップがあるのはなぜ?
- 水防法に基づくものと、そうでないものは何が違う?
- 洪水ハザードマップに法的効力はある?
- 洪水ハザードマップの色は何を意味する?
- 「0.5m~3.0m」なら3m浸水する?
- 色が付いている物件は避けたほうがいい?
- 家屋倒壊等氾濫想定区域も確認する
- 浸水継続時間も確認する
- マンションの上層階なら洪水は関係ない?
- 1階の賃貸物件では何を見る?
- 洪水ハザードマップに色がなければ安全?
- 不動産契約では洪水ハザードマップの説明がある?
- 不動産会社はハザードマップの内容を全部説明する?
- 水防法に基づく洪水ハザードマップがない場合は?
- 洪水ハザードマップはいつ確認する?
- 洪水ハザードマップはどこで確認できる?
- よくある質問
- まとめ|洪水ハザードマップは「何に基づく地図か」まで確認する
洪水ハザードマップとは?
洪水ハザードマップとは、河川が氾濫した場合に想定される浸水区域や浸水深などに、避難場所や避難経路など、洪水時の避難に必要な情報を加えた地図です。
水防法に基づく洪水ハザードマップでは、国や都道府県などが公表した洪水浸水想定区域などをもとに、市町村が避難に必要な情報を加えて作成・提供します。
洪水が起きてから見るためだけのものではなく、
「自宅や検討している物件にどのような洪水リスクが想定されているのか」
を事前に確認するためにも役立ちます。

洪水ハザードマップは法律に基づいて作られている?
水防法に基づく洪水ハザードマップは、文字どおり水防法に基づいて作成・提供されるものです。
大まかな流れは、
国・都道府県など
↓
洪水浸水想定区域などを指定・公表
↓
市町村
↓
避難場所などの情報を加える
↓
洪水ハザードマップを作成・提供
となります。
国土交通省によると、洪水浸水想定区域を含む市町村の長は、水防法第15条第3項に基づいて洪水ハザードマップを作成し、各世帯に提供します。
洪水浸水想定区域図と洪水ハザードマップは違う?
似ていますが、同じものではありません。
洪水浸水想定区域図は、河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域や浸水深などを示した図面です。
それに対して洪水ハザードマップは、その情報に避難場所や洪水予報等の伝達方法などを加え、住民が避難に利用できるようにした地図です。
水防法に基づかないハザードマップがあるのはなぜ?
ここは、不動産を探すときに知っておきたいポイントです。
自治体のホームページなどを確認すると、水害に関する地図が公開されていても、水防法に基づいて作成された水害ハザードマップではない場合があります。
たとえば、
- 過去の浸水実績を示した地図
- ため池ハザードマップ
- 自治体独自の防災マップ
- 独自の調査や想定を利用した水害リスク情報
などです。
これらも地域の災害リスクを知るうえでは役立つ情報ですが、水防法に基づく水害ハザードマップとは区別して考える必要があります。
国土交通省の公式FAQでも、ため池ハザードマップや浸水実績図など、水防法以外の規定等によるハザードマップが存在することが示されています。
つまり、
「自治体がハザードマップを公開している」
=
「水防法に基づくハザードマップがある」
とは限りません。
物件を確認するときは、地図の名称だけではなく、何を根拠に作成された地図なのかも確認するとよいでしょう。
水防法に基づくものと、そうでないものは何が違う?
物件探しという観点では、どちらも災害リスクを確認するための参考情報になります。
一方、不動産取引の重要事項説明では違いがあります。
宅地建物取引業法上の重要事項説明で対象となるのは、水防法に基づいて作成された水害ハザードマップです。
国土交通省も、水防法以外の規定に基づく「ため池ハザードマップ」などまで、この説明義務の対象としているわけではないと明示しています。
そのため、
防災情報として役立つ地図
と、
宅建業法上の重要事項説明で位置を示す対象となる地図
は、分けて理解しておくことが大切です。
洪水ハザードマップに法的効力はある?
ここも誤解しやすいところです。
水防法に基づく洪水ハザードマップは、法律に基づいて作成されるものです。
ただし、
ハザードマップ上で色が付いていること自体によって、直ちに居住・売買・賃貸や建築が禁止されるわけではありません。
つまり、
「法律に基づいて作成される」
=
「地図の色そのものが建築などを禁止する規制」
ではありません。
土地や建物について法的な制限があるかを調べる場合は、ハザードマップとは別に、その土地に関係する法令や区域指定などを確認する必要があります。
洪水ハザードマップの色は何を意味する?
洪水ハザードマップを見ると、黄色・ピンク・赤などで地域が色分けされています。
一般的には、河川が氾濫した場合に**想定される浸水の深さ(浸水深)**などを色で表しています。
たとえば、
- 0.5m未満
- 0.5m~3.0m
- 3.0m~5.0m
- 5.0m以上
などです。
ただし、色や区分はハザードマップによって異なる場合があります。
色だけを見るのではなく、必ずその地図の凡例を確認しましょう。

「0.5m~3.0m」なら3m浸水する?
必ず3mまで浸水するという意味ではありません。
「0.5m~3.0m」と表示されている場合は、一定の想定条件のもとで、その範囲の浸水深が想定されている区域という意味です。
また、実際の建物への影響は、
- 敷地の高さ
- 道路との高低差
- 建物の床の高さ
- 建物構造
- 周辺の地形
などによっても異なります。
そのため、ハザードマップだけを見て、個別の住戸が実際に何m浸水するかを断定することはできません。
色が付いている物件は避けたほうがいい?
ハザードマップに色が付いているという理由だけで、一律に判断することはできません。
大切なのは、どのような洪水リスクが想定されているのかを具体的に確認することです。
特に、
- 想定浸水深
- 浸水継続時間
- 家屋倒壊等氾濫想定区域
- 建物の構造
- 住戸の階数
- 敷地と道路の高低差
- 避難場所
- 避難経路
などを確認しましょう。
家屋倒壊等氾濫想定区域も確認する
洪水リスクを見るときは、浸水深だけでなく家屋倒壊等氾濫想定区域も確認しておきましょう。
洪水時の氾濫流や河岸侵食によって、家屋の倒壊・流失などのおそれがある区域を示すものです。
特に戸建てや土地を購入するときは、
「何m浸水する可能性があるか」だけでは判断しない
ことが重要です。
浸水継続時間も確認する
浸水継続時間を確認できる場合は、こちらも見ておきましょう。
住戸自体が直接浸水しなくても、建物周辺の浸水が長時間続けば、
- 外出が難しくなる
- 車を移動できない
- 建物設備が利用できない
- ライフラインに影響する
といった可能性があります。
浸水深と浸水継続時間の両方を確認することがポイントです。
マンションの上層階なら洪水は関係ない?
上層階であれば、住戸内への直接的な浸水リスクは低くなる場合があります。
しかし、
「上層階だから洪水ハザードマップを確認しなくてもいい」わけではありません。
1階や地下部分が浸水すると、
- エントランス
- エレベーター
- 受変電設備
- 給排水設備
- 地下駐車場
- 機械式駐車場
- 駐輪場
などが影響を受ける可能性があります。
マンションでは住戸階だけではなく、建物全体への影響も考えておきましょう。
1階の賃貸物件では何を見る?
1階の物件では、特に想定浸水深を確認しておきたいところです。
内覧時には、
- 道路と敷地の高低差
- エントランスの高さ
- 住戸の床の高さ
- 半地下になっていないか
- 駐車場・駐輪場の位置
なども確認するとよいでしょう。
ハザードマップと実際の現地状況を合わせて確認することが大切です。

洪水ハザードマップに色がなければ安全?
色がない=洪水が起きない、という意味ではありません。
ハザードマップは一定の想定条件に基づいて作成されています。
また、洪水ハザードマップは主に河川の氾濫による洪水リスクを確認するものです。
大雨によって下水道などの排水能力を超えて発生する内水などは、別のハザードマップで確認する必要があります。
洪水ハザードマップだけで、水害リスクのすべてを判断しないようにしましょう。
不動産契約では洪水ハザードマップの説明がある?
あります。
2020年8月から、不動産取引における重要事項説明の対象として、水防法に基づく水害ハザードマップ上の対象物件の所在地が追加されています。
対象となるのは、水防法に基づいて作成された、
- 洪水
- 雨水出水(内水)
- 高潮
の水害ハザードマップです。
売買だけではなく、賃貸も対象です。
宅地建物取引業者は、対象物件を含む最新の水害ハザードマップを提示し、対象となる物件のおおむねの位置を示します。
不動産会社はハザードマップの内容を全部説明する?
ここは重要です。
宅地建物取引業法上の説明義務は、ハザードマップを提示して対象物件のおおむねの位置を示すことです。
ハザードマップに書かれている内容のすべてを詳細に説明することまで義務付けているものではありません。
また、
「この物件は絶対に浸水しません」
「ここなら安全です」
と不動産会社が安全性を保証する制度でもありません。
重要事項説明で初めて確認するのではなく、物件を検討している段階から自分でも確認しておくことをおすすめします。
水防法に基づく洪水ハザードマップがない場合は?
ここも「ハザードマップがない=洪水リスクがない」と考えないことが重要です。
取引対象物件が所在する市町村に、水防法に基づく水害ハザードマップが作成されていない場合、宅地建物取引業者は、
「水防法に基づく水害ハザードマップは作成されていない」
旨を説明する必要があります。
つまり、
水防法に基づくマップがない
=
水害が起こらない
ではありません。
さらに、水防法に基づくマップがなくても、自治体独自の防災マップや浸水実績図などが公開されている場合があります。
重要事項説明の対象外であっても、物件を検討するための参考情報として確認しておくとよいでしょう。
洪水ハザードマップはいつ確認する?
おすすめは、物件をある程度絞り込んだ段階です。
契約直前ではなく、
物件を探す
↓
候補を絞る
↓
洪水ハザードマップを確認
↓
内覧・現地確認
↓
申込・購入判断
という流れがおすすめです。
特に不動産を購入する場合は、物件を比較している段階から確認しておきましょう。
洪水ハザードマップはどこで確認できる?
まずは、物件所在地の市区町村が公開している洪水ハザードマップを確認しましょう。
また、国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、全国の災害リスク情報を確認できます。
「重ねるハザードマップ」では洪水などの災害リスクを地図上で確認でき、「わがまちハザードマップ」では自治体が公開しているハザードマップを探せます。
ただし、先ほど説明したとおり、地図を確認するときは何を根拠に作成されているものなのかも確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 洪水ハザードマップは法律に基づくものですか?
水防法に基づいて作成される洪水ハザードマップがあります。
ただし、「ハザードマップ」という名称で公開されているすべての地図が水防法に基づくものとは限りません。
Q. 水防法に基づかないハザードマップは意味がない?
いいえ。
自治体独自の防災マップや浸水実績図なども、地域の水害リスクを考えるうえで参考になります。
ただし、宅建業法上の重要事項説明で位置を示す対象となる水害ハザードマップとは区別して考える必要があります。
Q. 色が付いている物件は契約できない?
ハザードマップに色が付いているという理由だけで、賃貸契約や売買契約が禁止されるわけではありません。
Q. 「0.5~3.0m」なら3m浸水する?
必ず3m浸水するという意味ではありません。
一定の想定条件において、その範囲の浸水深が想定されている区域です。
Q. マンションの上層階なら確認しなくても大丈夫?
確認することをおすすめします。
住戸が直接浸水しなくても、エレベーターや電気設備、駐車場などが影響を受ける可能性があります。
Q. 色がなければ安全?
絶対に安全という意味ではありません。
また、洪水とは別に内水などの水害リスクがある可能性もあります。
Q. 賃貸でも重要事項説明の対象?
はい。
水防法に基づく水害ハザードマップが作成されている場合、賃貸でも重要事項説明の対象になります。
まとめ|洪水ハザードマップは「何に基づく地図か」まで確認する
洪水ハザードマップは、河川が氾濫した場合に想定される浸水区域や浸水深、避難に必要な情報などを確認するための地図です。
水防法に基づいて作成される洪水ハザードマップがある一方、自治体独自の防災マップや浸水実績図など、水防法に基づかない水害関連の地図が公開されている場合もあります。
そのため、
「ハザードマップがあるか」だけではなく、「何を根拠に作成された地図なのか」まで確認することがポイントです。
そして、物件探しでは、
想定浸水深
↓
浸水継続時間
↓
家屋倒壊等氾濫想定区域
↓
建物・住戸階
↓
現地の高低差
↓
避難場所・避難経路
まで確認しておきましょう。
また、ハザードマップに色がないからといって、洪水が絶対に起きないという意味でもありません。
洪水ハザードマップを「危険な物件を決める地図」と考えるのではなく、その場所にどのような洪水リスクが想定されているのかを知り、物件選びや避難行動を考えるための資料として活用することが大切です。
